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バッハのコラールは、これまであまり親しみのない分野の音楽だった。昨夏リリースしたCD「涙と祈り」で、録音エンジニアのI氏の推薦もあって、「汝の道をゆだねよ」に取り組んだのが最初となり、それ以来、その魅力に憑りつかれたように、マリンバ用に何曲も編曲、演奏会でもしばしば取り上げるようになった。 コラールは、ドイツのプロテスタント教会で長年歌われてきた讃美歌を、バッハが、四声(ソプラノ・アルト・テノール・バス)用に作曲し直した音楽である。原曲の讃美歌はソプラノのパートが担当し、他の三声は、和声と対位法の綾でそれを包み込んでいく。 コラールの魅力の中で、私にとって第一は、その「和声と対位法の綾」である。音楽を織物に例えると、横に走る繊維が、旋律や対旋律の流れ、つまり、対位法の流れ、そして、縦に走る繊維が、和音を並べた和声の流れとなる。バッハが生きた多声音楽の時代は、対位法の流れを第一に考え、和声の流れは、それに付随して現れてくるもの、というとらえ方が一般的だ。 コラールを、一人で演奏するにあたって、(1)四つの声それぞれをいかに独立した流れとして聴くか、(2)それぞれの声部にどのように異なった性格を与えるか、(3)場面場面においていかにそのバランスを変化させるか、というのが挑戦となる。ほとんどが二分間ほどの短い音楽にも関わらず、考えなければいけないことがとても多い。これが、「小宇宙」と言われる所以だろう。 上記の3つがうまく実現できた時、二次元であるはずの織物が、その綾をふんわりと膨らませて、三次元の姿となって現れてくるから不思議だ。 第二の魅力は、「時の、何層もの重なり」である。コラールの元になった讃美歌は、中世から歌い継がれたものも多い。つまり、バッハの生きたバロック時代より、さらに何百年も古い音楽である。それをマリンバで演奏すると、中世、バロック時代、現代の三つの時代が層として重なって聴こえてくるように感じられる。 また、中世・ルネサンス時代に使われていた教会旋法で書かれた讃美歌も多いので、耳慣れたバロック時代以降の機能和声の響きとは異なる世界が繰り広げられる。例えば、「キリストは甦りたまえり」の中で「ハレルヤ」と歌う時、春寒の未明、ろうそくの火の中で、一人で祈りを捧げるような気持ちにさせられる。一方で、現代の耳をもってしても、革新的に聴こえるような響きも、同じ理由から生まれてくる。最近編曲した、「我は満ちたれり」では、禁忌とされた増四度の音程や、調性感をあやうくさせるような半音階進行も大胆に現れる。 第三に、「宗教的な意味合い」である。この点は、私自身がキリスト教徒ではないので、圧倒的に理解不足な訳だが、人々が何百年の間祈りを込めてきた、その歌詞の言葉の重みは感じることができる。先述した「汝の道をゆだねよ」の中で、「その方は、雲や風にも行く道を与える。あなたが歩むことのできる新しい道を、きっと見つけてくださる。」と歌う時、その言葉に希望を見出すのは、キリスト教徒であってもなくても、変わりが無いのではないだろうか。 コラールを演奏会で演奏すると、他の音楽とは異なった反応が返ってくることに気付いた。聴衆の中には、これらの讃美歌と共に育った人も多いので、「歌詞も全部覚えていたから、一緒に歌いながら聴いていた」とか、「他にも僕の好きなコラールがあるよ」と教えてくれたりもする。作曲家や演奏家たちからは、「バッハの器楽曲をマリンバで演奏することは予想がついたけど、コラールは予想外だった」に始まり、「四声を何て自由に操って演奏しているんだろう」とか、「長いフレーズを美しく歌い上げることが、打楽器で出来るなんて」という驚きの声をもらう。どれも、とても演奏のし甲斐がある反応である。 一昨年には、そんなコラールの一曲を元にして、ベンジャミン・ボイル氏にマリンバ独奏のための変奏曲を作曲してもらった。演奏するたびに、こういう内容の深い作品が、マリンバのためにもっと生まれて欲しいと思う。 コラールを元にした新しい作品を、また委嘱しようか、と考え始めているこの頃である。 2019年元旦
by makotomarimba
| 2019-01-22 23:22
| 名倉誠人のNY便り
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