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四十年以上も前になるだろうか、木琴協会の会報に、「バッハを弾こう」という記事が掲載され、それを繰り返し読んだことを覚えている。ピアノでバッハの音楽を演奏するのに取り憑かれていた私は、マリンバでもバッハを演奏していきたいと強く思うようになった。 中学・高校時代には、無伴奏ヴァイオリンやチェロの作品に取り組み始め、プロの演奏家になってからも、レパートリーの中心として、委嘱作品と共に、世界各地の演奏会で演奏してきた。また、それらの作品を録音し、何枚ものCDとしてリリースしてきている。 バッハを含め、編曲作品を演奏する時、何か新しい世界をその作品に与えることができなければ、その作品をマリンバで演奏する意味がない。「やっぱり元々書かれた楽器、○○の方が良かった。」という言葉は、マリンバに関わる我々の誰もが聞いたことがあるのではないだろうか。 そんな中、作曲家や演奏家の同僚から、「君の演奏をバッハが聴いたら喜ぶと思う。」、「バッハが生前にマリンバを知っていたら、マリンバ曲を絶対書いていたと思う。」という言葉が、次第に聞けるようになってきた。バッハの音楽の純粋さ、抽象性、そして、その精緻な対位法を表現するのに、長すぎず、短すぎないマリンバの美しい響きがとても適しているというのだ。さらに、親しい友人で、ジュリアード音楽院・作曲科教授のフィリップ・ラサー氏の言葉、「バッハは、楽器の音色に頼って作曲をしていない。」には目を啓かされた。言い換えると、元々の楽器以外の楽器で演奏しても、バッハの堅牢な音楽は壊れることがない、ということだからだ。 キリスト教徒ではない私は、バッハの宗教作品について、真に理解できないのでは、という印象を持っていた。十年ほど前に、コラール「汝の道を委ねよ」を録音することになり、その美しさ、音楽の深さに魅了されることになった。考えてみると、四声の合唱曲であるコラールを演奏できる独奏楽器というのは、パイプオルガンやピアノなどに限られている。しかし、四本撥で、トレモロを使ってマリンバで演奏すると、まるで混声合唱が歌うかのように、各声部のバランスを微妙に変化させながら演奏していくことも可能となる。 コラールは、ドイツのプロテスタント教会で長年歌われてきた讃美歌を使い、バッハが混声合唱曲に仕上げたものだ。旋律に対して和音を付ける、という、音楽を「縦に捉える」作曲に終わらず、それぞれの声部が対位法の綾を「水平方向にも織り成していく」コラールは、十字架の形を、その書法自体で具現しているとも言われる。マリンバで演奏する時には、その両方向の音楽の流れを、演奏でいかに浮き上がらせていくか、ということが重要となる。 私の生徒達を見ていると、単旋律の音楽には慣れているので、音楽を縦に捉えることは問題なくできる。しかし、水平方向に流れる動きを同時に捉えて演奏することは、中々難しいようだ。そんな彼らに薦める練習法は、四声を演奏しながら、一つの声部を歌っていく、というものだ。そうすることによって、その声部の持つ役割や、他声部との絡み合いも体感でき、音楽を立体的に捉える感覚を養える。ある日、私自身この練習をしている時に、音楽の美しい伽藍に身を置くような思いとなり、心が震えた。 異教徒の私でも、これだけコラールに心酔させられている。歌詞の内容を研究しても、宗教的な意味は真に理解できていないに違いない。それでも、「こんなに美しい音楽はない。」と思わせられるということは、それは、音楽の勝利としか言いようがないのではないだろうか。バッハも、私にコラールを演奏するな、とは決して言わないだろう。 追記:風の音ミュージックパブリッシングより出版された、名倉誠人編曲作品集第一巻「バッハのコラール」も、こちらから是非ご覧ください。
by makotomarimba
| 2021-04-01 23:59
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